SHINAGAWA HIVE丨日本の玄関口「品川」からイノベーションを生むコミュニティ HIVE

SHINAGAWA HIVE STORY 01前編なぜ、品川で“共創”をはじめるのか─⽴ち上げの背景と、⽇鉄興和不動産の構想
STORY.01/前編

なぜ、品川で“共創”をはじめるのか─
⽴ち上げの背景と、
⽇鉄興和不動産の構想

テック企業が数多く集積する品川。その利便性と機能性からビジネス拠点としての地位を確⽴しながらも、「通過点」として⾒られがちなこの街に、新たなつながりと価値を育てようとする動きが始まっています。旗振り役を務めるのは、品川インターシティを擁し、⻑年この地の発展に取り組んできた⽇鉄興和不動産。同社が⽴ち上げた共創コミュニティ「SHINAGAWA HIVE」は、なぜ⽣まれたのか。その背景をひも解きます。

Story.01
Update_2025.07.18
金谷 貴央
金谷 貴央
日鉄興和不動産株式会社
都市事業本部 エリアマネジメント部
グループリーダー
吉川 昇日
吉川 昇日
日鉄興和不動産株式会社
都市事業本部 エリアマネジメント部
エリアマネジメントグループ

〈1〉通過点から
“つながる街”へ─
共創構想の起点

品川には多くのテック企業が集まっており、素晴らしい技術を有しているにもかかわらず、なかなか社外に届かない、実装できないといった悩みを抱える企業が少なくないといいます。

吉川(以下「吉」):

「そうしたテクノロジーを持っている企業だけでなく、最先端の技術は持っていないけれどせっかく品川に拠点を置いているのだから、テック企業と連携したいという声も聞こえてきました。両者がマッチングしたり、相互理解する場を私たちが作ることができれば、街のエリアブランディングにつながると考えたんです」

金谷(以下「金」):

「私たちとしては、品川エリアのエリアブランディングを図っていくことが大きな軸にあります。丸の内が金融系、渋谷がスタートアップ系というように、品川でも“イノベーション・テクノロジーの街”というブランディングができないかと考えていました」

SHINAGAWA HIVEの構想は、そうした声や背景を受けて生まれました。これまで文化的なイベントやにぎわい創出にも取り組んできた同社が、新たにイノベーション・テクノロジーを軸としたコミュニティ形成に乗り出す理由が、ここにあります。

SHINAGAWA HIVEの構想を語る吉川さん

〈2〉ハードからソフトへ─
まちづくりの視点転換

SHINAGAWA HIVEの背景には、都市開発の発想そのものの変化があります。

金:

「品川インターシティは1998年竣工で、もう25年以上が経っています。当時はまだ“まちづくり”という発想はあまり浸透していませんでした。駅前にビルを建ててオフィスが入ればよいという時代で、ハード面中心の考え方が主流でした」

吉:

「最近では“通過点”としての印象が強いという声も多く聞かれます。利便性があっても、街に滞在して関係性を築くような“居場所としての魅力”が希薄なのではないかと感じています」

時代の変化とともに、エリアの価値は建物だけでは測れなくなりました。企業がどんな文化を持ち、地域とどんな関係性を築けるか。そうした視点が、まちづくりに欠かせないものになってきたのです。

金:

「2020年には、スタートアップ育成支援のためのインキュベーション施設『SPROUND』も開設しました。インターシティ25周年では『ビジネス街じゃ、終われない。』というメッセージを掲げ、品川を“つながる街”にしていこうという想いを表明しました。HIVEは、まさにその流れの延長線上にある取り組みなんです」

スタートアップ育成支援のためのインキュベーション施設『SPROUND』
スタートアップ育成支援のためのインキュベーション施設『SPROUND』

〈3〉“居場所としての魅力”が示す、
品川の課題

都内を代表するオフィス街であり、広域移動に便利な交通結節点としての魅力も有する品川。しかしその一方で、「居場所」としての価値が育ちづらいという課題もあります。

吉:

「東海道新幹線が利用でき、羽田空港にもアクセスしやすい交通の要所というイメージはありますが、どうしても“通過点”になってしまっているところがあると思っています。単なる利便性だけでなく、“居たい”と思える空気感や文化が必要なんだと思います」

金:

「品川は、遡れば旧東海道の第一の宿場町という歴史はありますが、特に港南口は埋立地ということもあり、歴史的な文化があまり残っていない比較的新しいエリアです。その中で、私たちが独自のカルチャーを育てていく必要があると感じています」

企業個々での取り組みでは世の中に届きにくい。その課題を、HIVEというコミュニティの力で乗り越えていきたいという思いも強くあります。

金:

「著名な大企業でもセミナーやワークショップなどは行われていますが、それを“個社の取り組み”で終わらせていては、広がるのが難しいところ。エリア全体で発信していく風土があれば、これまで以上に相乗効果が生まれると考えています」

吉:

「品川は、リニア中央新幹線の開通や、高輪ゲートウェイ駅周辺エリアを含めた高輪口の再開発などを通じて、より日本の玄関口としての機能を拡大していくエリア。そこに共創のカルチャーを養っていければ、品川のポテンシャルを最大限に発揮していけるのではないかと感じています」

SHINAGAWA HIVEの構想を語る金谷さん

〈4〉SHINAGAWA HIVEに込めた
名前と意志

「HIVE(ハイブ)」という名称には、いくつかの意味が込められています。

吉:

「“HIVE”には“ハチの巣”という意味がありますが、これは異なる業種・業界のイノベーターたちが集まって知見や技術を共有し、“ハチミツ”のような成果を生み出していくイメージです。ロゴマークも、コミュニティの多様性と、集合知を象徴する構成にしています」

ロゴを俯瞰すると「品川」の文字が浮かび上がるような形になっているのもポイントです。そこには、“品川である必然性”を大切にしたいという想いが込められています。

吉:

「“HIVE”には活気にあふれた場所という意味もあります。品川のイノベーターが集まり、共創し、街の中から価値を生み出していく。そうした活気のある場にしていきたいと思っています」

金:

「単なるギブアンドテイクではなく、それぞれが“自分ゴト”として関わっていくことが大事だと考えています。企業の枠を超えて、アイデアが連鎖し、イノベーションが生まれていく──そんな場を、私たちはHIVEを通じて実現したいと思っています」

SHINAGAWA HIVE
Story.01
Update_2025.07.18