SHINAGAWA HIVE丨日本の玄関口「品川」からイノベーションを生むコミュニティ HIVE

SHINAGAWA HIVE STORY 01中編共創が“機能する場”をどう設計するか─多様なプレイヤーを巻き込む仕組みと設計思想
STORY.01/中編

共創が“機能する場”をどう設計するか─
多様なプレイヤーを巻き込む
仕組みと設計思想

「共創は理想。でも、実際には難しい」──そんな声が少なくありません。だからこそ、SHINAGAWA HIVEは“つながり方”から考え直しました。参加する企業や人が自然に出会い、語り合い、ともに可能性を見出すためには、どんな仕組みが必要なのか。今回は、立ち上げメンバーである日鉄興和不動産の金谷さん・吉川さんの言葉から、HIVEの設計思想を読み解きます。

Story.01
Update_2025.07.18
金谷 貴央
金谷 貴央
日鉄興和不動産株式会社
都市事業本部 エリアマネジメント部
グループリーダー
吉川 昇日
吉川 昇日
日鉄興和不動産株式会社
都市事業本部 エリアマネジメント部
エリアマネジメントグループ

〈1〉集まるのは「テック企業」だけじゃない─
参加企業の広がり

SHINAGAWA HIVEに参加している企業は、いわゆるテック企業だけにとどまりません。

吉川(以下「吉」):

「テック企業が集まっているという印象を持たれるかもしれませんが、それだけではありません。自社事業とテックを掛け合わせたいという企業の方々にも参加いただいています。属性としては、新規事業やR&Dのご担当者の方が多いですね。大企業の中でもハブのような役割を担っている方々が参加されています」

金谷(以下「金」):

「もともとテック系だけをターゲットにしていたわけではなく、広く受け入れていく方針でした。また、テック企業のほうでも“せっかく先進的な技術を持っているのに使い道がない”、“テクノロジーを形にしたいけれど実用性が乏しい”といった声は想像以上にあふれています。そうしたニーズを捉えた上で、HIVEがきっかけとなり、テクノロジーの社会実装につなげていければと考えています」

HIVEが目指すのは単なる情報共有ではなく、「技術をどう世の中で活かすか」という文脈を持った共創。そのためには、異なる領域や立場の企業が集まることは必然とも言えます。

SHINAGAWA HIVEの構想を語る金谷さん

〈2〉“共通言語”をどうつくるか─
共創の難しさと現実

参加企業の関心は、単なるテクノロジー自体よりも、それを「どう活かせるか」に向いています。

吉:

「AIなどの特定のテーマに強くこだわるというより、“自社の技術が他でどう活かせるか”という視点に関心がある方が多い印象です。とはいえ、“共創”ってやっぱり難しいという声も根強くあります。また、共創を進めるうえでは、参加企業のリソースやスピード感の違いも障壁になります。どうすれば本気で取り組めるのか、どうすれば時間を割けるのか。そういった課題も意識しながら進めていく必要があると感じています」

金:

「ただ、私たちは“万全の支援をしよう”としているわけではありません。HIVEはむしろ、会員個々が自ずとつながり合うような、マッチングのきっかけをつくるコミュニティでありたいと思っています。“この技術を活用すれば、こういうイノベーションが生まれるのでは”といった気づきを与えることこそが、HIVEの大切な役割だと思っています」

HIVEは、テーマを限定せず、広く受け入れる設計思想のもとに運営されています。視点の転換や領域の越境を促すことで、共創の芽を育てていこうとしています。

SHINAGAWA HIVEの構想を語る吉川さんと金谷さん

〈3〉偶発的な出会いをどう仕掛けるか─
運営設計の工夫

そのような多様な企業同士をどうつなぐか。その工夫のひとつが、月に1回行われる「How to make innovation」というイベントです。

吉:

「会員の方にご登壇いただいて、それぞれのイノベーション事例を共有するイベントです。しかし、ただ聞いて終わり、という場にしないよう、運営側からも会員の関心を把握しながら、オーディエンス側にも質問を投げかけるなどして、双方向の議論が生まれるようにしています」

金:

「ナレッジの共有としての意義もありますが、実はその後に設けているネットワーキングこそが重要だと思っています。発表をきっかけに話しかけやすくなるよう、意識的に構成しています」

こうした“出会いのきっかけ”を補完するために導入されているのが、「Beatrust」という人材の関心、強み等を可視化できるタレントコラボレーションプラットフォームです。

吉:

「Beatrustでは、どの企業の誰がどんな技術を持ち、どんなことに関心があるのかが分かるようになっています。これによって、共通の関心を持つ人同士がつながりやすくなる。問いかけや情報収集もやりやすくなると期待しています」

金:

「例えば“AIに興味がある”人と、“AIに関する技術を持っている”人が、Beatrust上で出会える。それを通じて話しかけるきっかけが生まれたり、グループ化したりすることができるようになります」

このように、HIVEはリアルとデジタルの両面から“自然な出会い”を仕掛ける設計となっています。

イベント「How to make innovation」の風景
イベント「How to make innovation」の風景

〈4〉企業を超えて、
人と人がつながるコミュニティへ

HIVEにおいては、企業という枠にとどまらず、“人”の関心や得意分野にフォーカスしています。

吉:

「Beatrustでは、企業単位ではなく“A社の◯◯さん”というように個人名で登録いただいています。それぞれ関心のあるテーマが異なりますし、企業の事業領域だけでは捉えきれないような出会いが生まれています」

金:

「普段どういったテーマにアンテナを張っているのか、何に興味があるのかが見える化されることで、自然と会話が生まれる環境ができてきます」

さらに、立ち上げ期だからこそ“関係性をどう育てるか”が重要です。

吉:

「HIVEの立ち上げにあたっては、各社に“何をHIVEに期待しているか”をヒアリングしています。そうした声はイベントにも反映しながら、まずは相互理解を深めることに注力しています」

金:

「自分ゴトとして関われる場にしていくことが重要です。初めて参加される方にも不安なく飛び込んでもらえるよう、参加者と共に運営を形づくっていきたいと思っています」

共創は、制度だけでは生まれません。人がつながり、人が語り、人が動き出す。HIVEは、そうした営みのひとつひとつを丁寧に設計しています。

Story.01
Update_2025.07.18