
都市に新たな文化を宿すために─
SHINAGAWA HIVEが目指す未来と、
日鉄興和不動産の挑戦
共創の“場”として立ち上がったSHINAGAWA HIVE。その取り組みは、単なるネットワーキングの枠を超え、「街そのものを変えていく」可能性を帯びはじめています。今回は、HIVEが見据える中長期の展望と、都市や文化へのまなざしについて、日鉄興和不動産のお二人に伺いました。

都市事業本部 エリアマネジメント部
グループリーダー

都市事業本部 エリアマネジメント部
エリアマネジメントグループ
〈1〉街の価値を“自分たちの言葉”で
伝えていくために
HIVEが立ち上がった今、日鉄興和不動産が重視しているのは「街の活動をどのように社会に伝えるか」という視点です。
吉川(以下「吉」):
「発展像としては、HIVEの活動をコミュニティの中だけにとどめるのではなく、“品川でこういうことが起きている”ということをもっと外に発信していきたいと思っています。HIVEの公式メディアだけでなく、品川という街全体のイノベーションを伝えるようなメディア展開も検討しているところです」
「品川に行けばイノベーションに関する面白いことが起きている」「おもしろい人が集まっている」──そんな街の印象を醸成していくためには、活動そのものを“見える化”し、言語化していくことが欠かせません。

〈2〉品川から、地域・社会へ─
広がる実装の射程
HIVEは今後、品川という地域の中にとどまらず、社会とのつながりを広げていく構想を描いています。
金谷(以下「金」):
「東京だけでなく、地方の都市圏や小さな町が抱えている課題にも、HIVEで得た知見や技術を生かせるようにしたいと思っています。社会実装に向けた受け入れの幅を広げ、現場で“意味のある技術”を育てていければと考えています」
吉:
「品川という地の利も活かしたいですね。新幹線もあるし、空港アクセスもいい。例えば、新幹線でつながっているエリア、飛行機で行き来できるエリアなど、地域や国の枠を超えて結びついていけたらと考えています」
また、SHINAGAWA HIVEを通して「品川=イノベーション・テクノロジーの街」という文脈を育てていきたいという思いも強くあります。
金:
「セミナーだけではカルチャーは育ちません。だからこそ、“SHINAGAWA TECH SHOWCASE”※のような街全体を使ったテクノロジーの体験イベントを提供することも大切。そうした活動の中で、“品川=イノベーション・テクノロジーの街”という風土も育っていくものと思います。“こうすれば品川をもっとイノベーション・テクノロジーの街として社会に表現できるのでは?”といった声も、たくさん伺っていきたいです」
HIVEは、共創の内側だけで完結せず、実際に街に作用し、社会に還元されていく仕組みを見据えています。

〈3〉都市開発から、文化の設計へ
デベロッパーという立場から、日鉄興和不動産は「都市文化を育てること」への責任と意志を語ります。
吉:
「今や、不動産開発と“文化を育てる”という視点は切り離せません。単に建物を作るだけではなく、どんな人がどんな暮らしをしていくか、どんな文化をはぐくむか──そこまで考えなければ、街の価値は高まっていかないと思っています。品川においてさまざまなステークホルダーと関わってきた知見・経験を持っているのはデベロッパーである日鉄興和不動産ならではの強み。HIVEでは、そうした関係値を生かしながら共創を図っていきたいと考えています」
金:
「以前は“都市が経済を作る”という発想でしたが、今は“産業が都市を作る”という感覚に変わってきていると感じています。丸の内や渋谷のように、それぞれの街が違う顔を持つ時代。品川がどんな色を出していくかが問われています」
品川の都市開発は、いまや“機能”や“利便性”を整えるだけでは足りません。共創、文化、技術といった目に見えづらい価値をどう醸成し、根付かせていくかが、次の挑戦です。
金:
「日鉄興和不動産は、四半世紀前に品川インターシティというオフィスビルを創り、品川・港南口の発展のきっかけを作った企業としての責任と自負があり、HIVEについても大きな意義を感じています。テクノロジーという色を活用し、イノベーションを起こしていくエリアとしてこの品川のブランディングを図っていきたいと思います。そうしたエリアを盛り上げ、ブランド化していくためのツールとして、企業の皆様にもHIVEを大いに活用していただきたいと思っています」

〈4〉イノベーションを
“見える化”する都市へ
HIVEが目指しているのは、単なる共創の場にとどまらず、“都市そのものがメディアになる”ような場づくりです。
吉:
「“品川に行けば知的創造性が高まる”、“品川に行けば新しいものに出会える”──HIVEを通して、そんなイメージをもたらすようなエリアブランディングにつなげていければと思っています。HIVE会員の皆様と一緒に品川を盛り上げるとともに、品川にはそうした面白いイノベーターが集まっていて、常に新しいことが画策されているといったイメージを作っていきたいと思います」
金:
「たとえば、“来ることで情報が得られる街”“実証実験ができる街”“アイデアを表現できる街”──そうした都市空間をつくっていきたいですね」
HIVEを通じて、テクノロジーをただの機能ではなく、「表現」として扱い、街の空間や人々の体験に変えていく。そんな発想の広がりも見えてきました。
金:
「STEAM教育のように、次世代育成にもつながるような取り組みもできればと思っています。テクノロジーを“体験”として共有することで、より多くの人が街に関わり、理解し、未来の社会をつくる担い手になってくれるのではと期待しています」
HIVEは、いま始まったばかり。その先にあるのは、都市と人がもっと創造的につながる未来です。品川という街が、そんな未来の“触媒”となっていく──その兆しが、少しずつ見え始めています。